2023/11/20

マイ・フェイバリット・アーティスト


26年前1997年1月31日、深夜0:00過ぎ東京のホテルの一室でサイン入りのCD
ジャケットを眺めながら、ついさっき起こったことが現実のことなのか何かの間違い
なのか頭を混乱させながら放心状態にあった。
サインを書いたのは、“ブルース・スプリングスティーン”。
アメリカ ロック界のスーパースターであり私にとっての神様的存在。
来日公演が決まった時、ソニーミュージックの当店担当者に恥も外聞もかなぐり捨てて
懇願しました。「どんなに後ろでもいいのでチケットを1枚手配できませんか」
コネクションのお陰で入手することができたのですが、あとから聞いた話では、
チケットは超プレミアム物で青森県ではこの1枚を含めて4枚しか出回っていないとの
ことでした。
当日、会場は有楽町に出来立ての東京国際フォーラム、キャパ5000人の真新しいホール
での感動的なコンサートは19:00~21:00過ぎまで行われ夢の時間はあっという間に
終わった。
余韻を抱えたまま、名残惜しい気持ちでホールの周りを歩いていると、ある一か所に
ファンらしき人たちが十数名たむろしていた。そこは関係者用駐車場の出口だった。
多分ブルースを乗せた車がここから出で来るのであろう。スモークガラスで顔は見え
ないにしろ、存在を近くに感じたくて一緒に待つことにした。初めての出待ち。
東京とはいえ1月末の冷え込みの中、待つこと2時間 PM11:00過ぎブルースが乗って
いるであろう黒のワゴン車がゆっくり出てくる。思った通り中は見えない。歓声に
包まれる中、ワゴン車は路肩に停車した。ドアが開き中から屈強な体の外国人と
日本人が降りてきて言った「静にして、騒がないで!彼(ブルース)がみんなと一緒に
写真をとりたいってい言ってるから」それを聞いてまた“わぁー”と声を上げたが
関係者が人差し指を口に当てて「しーっ」、みんなは我に返って静まった。
ほどなくしてブルースが降臨する。私たちは道路を挟んで一段高くなっていて手すりの
あるところの内側にいた。ブルースが真っすぐ自分のほうへ向かってくる。咄嗟に
手を伸ばしブルースの手を取って手すりまで引き上げた。そして彼の肩に手を回し
マネージャーが構えるカメラに向かってポーズをとる。
そして車へと戻ってゆく。関係者の声がまた響く「彼がここにいる人全員にサインを
してくれるそうなので、ここに並んで」また歓声が上がり、そして「しーっ」。
私は万が一に備えて、自宅から最新アルバムの日本限定盤を持参していたのでその
見開きにサインをしてもらった。丁寧なサインと力強い握手とやさしい笑顔、
「Thank you」の言葉を生涯忘れない。
それから一週間後彼はグラミー賞授賞式で数億人の視聴者に向けてパフォーマンス
をしていた。

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